旅行情報サイト運営会社トラベルズー・アジアパシフィックの最新調査によると、中国人富裕層の今年の人気旅行先ランキングで日本がトップとなった。尖閣諸島をめぐる問題などで日中関係が冷え込んでいることを考えると、これは意外な結果かもしれない。
中国本土の回答者で最も行きたい旅行先に日本を挙げた人の割合は29%と、昨年の18%から大幅に上昇した。
中国人富裕層にとって、円安で日本は買い物天国となっている。円相場は昨年1年間で米ドルに対して約22%下落。一方、人民元相場は対米ドルで約3%上昇した。
トラベルズー中国部門のビビアン・ホン社長によると、中国人観光客は日本に滞在中、ルイ・ヴィトンのバッグや1000ドル(約10万4000円)の炊飯器などを先を争って買い込んでいる。
日本は長年、香港と台湾の人々にとって人気の旅行先となっている。だが最近になって、中国本土の観光客も日本の風景や食べ物の良さを理解し始めている。ホン氏によると、2011年の東日本大震災後にビザ規制が緩和されたことも追い風となった。
オスターハウト・コミュニケーションズ・アンド・デザイン・カンパニーの最高経営責任者(CEO)を務める上海在住のシャーリー・シューさんは07年に大阪を訪れ、日本を好きになった。今度の春節(旧正月)には双子の娘と息子を沖縄に連れて行く予定だ。シューさんは「領土問題はさておき、日本は文化と自然がうまく組み合わさっている」と語った。
トラベルズーの会員となっている中国人は、年間世帯所得が5万ドル(約520万円)以上の裕福な人々が多い。同社によると、オーストラリアやモルディブ、タイなどかつて上位にあった旅行先は人気が低下しているが、一般の人々の間では、タイと香港はまだ人気がある。
中国人富裕層の今年の人気旅行先ランキングで、台湾は昨年の4位から3位に浮上した。台湾は上海など大都市の住民が団体旅行ではなく個人で訪問できるよう後押ししており、多くが2度目の訪問を予定している。また、台湾では北京語が通じるため、本土の住民にとって旅行しやすい。
台湾の中国文化ももう1つの魅力だ。上海の編集者、シュアン・ジンさんは春節に家族全員を連れて台北と花蓮を案内するつもりだ。シュアンさんは「台湾には中国の伝統がよく保たれていて、春節を祝う雰囲気としては台湾の方が良いかもしれない」と話した。
米国も昨年の5位から2位に躍り出た。多くが大学訪問とアウトレットモールでのショッピングを旅行目的に挙げた。そのうちの1人、シュアンさんは今年の夏に13歳の息子を連れて大学、ディズニーランド、ユニバーサル・スタジオに行く予定だ。家族と一緒にアウトレットモールに立ち寄って衣類を購入したいと考えている。
中国人富裕層を引きつける旅行先トップ7―首位は日本
ホン氏によると、米国のランクアップに伴い、オーストラリアが順位を6つ落とした。また、中国人の多くがビーチで休暇を過ごすのに9時間の旅は長すぎると感じていることから、モルディブも人気を失いつつある。このほか、マスターカードの報告書によると、タイを舞台にした中国の大ヒットコメディー映画「ロスト・イン・タイランド」によって12年にタイは世界トップの旅行先となったが、その後、タイの人気も低下している。
中国人の間では海外旅行がますます盛んになっているが、中国訪問に対する外国人旅行者の気持ちは同じではない。トラベルズー・アジアパシフィックのジェイソン・ヤップCEOは、中国向けサイトでは海外旅行商品がよく売れているが、中国以外のサイトでは中国旅行商品の売れ行きはそれほど良くないと述べた。
その理由の1つは人民元高だ。中国はアジアの近隣諸国にとって安上がりな旅行先ではなくなっている。北京や上海での深刻な大気汚染に関するメディア報道や食品関連の不祥事の発生も足を引っ張っている。
中国の観光当局によると、13年1-11月の中国本土への訪問者数は前年同期比で2.5%減、支出額は4.4%減だった。