私の母は、ホームレスの話題になると、若いときにきちんと働いて老後に備えなかったからだとか、年金を納めてこなかったからだ、とか、自由に生きたいから望んでああいう生活をしているのだろう、などと言う。けれど私はどうしてもそういうふうには思えない。つい想像してしまうのだ。もしかしたら、私も将来ホームレスの生活を余儀なくされるような情況に陥るかもしれないと。散歩の途中、橋の下のホームレスの青いシートを見るたびに、自分が、集めた空き缶をかしゃんかしゃんとつぶすところ、河原の石で竈を作り煮焚きするところ、真冬に薄いシートの下で寒さに震えるところ、夏の夜に集まる虫や蚊に悩まされるところ、などを思い浮かべる。自分がそうなる可能性が100%ないなどとどうして言えるだろう。
そのような想像は杞憂だろうか。豊かな想像力が毎日の生活に潤いを与えるならよいが、膨らむ妄想力が余計な不安を醸しだすのは精神的によくないかもしれない。
けれど、やっぱり、夕刻に、たまたまホームレスのおじさんがシートの家の前に座ってたりすると、無性に話しかけたくなる。生活のノウハウを知っておきたいと思う。