心は停滞することを欲する

 
 心が一度、どこか身体の一部分に捕えられていると新たに働くときは、その特定の場処から取出して、いま要するところに持ってこなければならぬ、この転換はじつに容易ならぬ仕事である。心は一般に「止」まらせられたところに、停滞することを欲する。転換が楽になされるときですら、時間はかかる。自分のところになつかせたいと思って猫をつないでおくように、心を、その場処場処に括りつけておいてはならぬ。

(鈴木大拙『禅と日本文化』)



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