水売りの娘が水を売る特別に清く 特別に甘い水を
秘密の井戸から汲んでくる
井戸は母から
母の母から
そのまた母から
受け継がれ
乙女が手ずから汲み上げる清く甘い水は
父を養い
母を養い
弟妹を養い
娘を養うある日 どうしたことか 忽然と
井戸の水が枯れ果てた父は怒り
母は悲しみ
弟妹は泣きじゃくった途方にくれた娘は 新しい井戸を掘ることを決意する
娘は掘りつづけた
服が裂け 爪がはがれ 血が滲んでも
ひたすら掘りつづけ
とうとう水源に達した娘の見つけた清らかな水は
再び 父を 母を 弟妹を養うけれどその水は 二度と甘美ではありえなかった