アフリカという未開の地を舞台にした、異文化コミュニケーションの中で描かれる都会人の葛藤と苦悩の映画だった。アフリカとドイツに離れ離れに暮らしていた時は、互いに相手を求め合っていた夫婦が、アフリカで再会を果たした途端に心が離れてしまう。戦争があるから、家族が肩寄せ合って暮らしていくしかない。ところが戦争が終わって平和がやってくると、いよいよ家族は崩壊の危機に陥ってしまう。女性主人公が「文化は異なるから尊い」と覚醒する場面は、映画の中の最も印象的だった。文明というものから隔絶されたアフリカの生活にまったく馴染めずドイツを懐かしむが、幼い娘レギーナは、現地の料理人オウアとすぐに仲良くなり、アフリカでの生活に溶け込んだ。
この映画の中には、戦争、ナチス、アフリカ、夫婦、移民、仕事、自分たちの国を持たないユダヤ人の悲しさなど、いろいろなことが描かれて、とても奥深い、美しいアフリカの風景と共に、いろいろなことを考えさせられる。
故郷とはどこにあるだろう。愛する人のもと、親しい友人がいるところ、長年生活してきた土地、自分の出来ることがある場所?国から逃亡し、生きて再び戻るために生活してきた未開の地?長い間そこにいるとそこで出会った人達や空や大地が愛しくなるものだと思う。少女にとって、アフリカで暮らした7年間はかけがいのないものとなるだろう。乾いた砂と岩の大地の中、いつもさわやかな微笑みを投げかける少女は爽やかな風だった。
富を失う時、人間は心と向合い。地位を失う時、弱者の立場に気づき。プライドを失う時、謙遜になる。