中国旅行記(4)~烏鎮の民宿~


2010年4月13日~14日 烏鎮(一泊)

 烏鎮西柵内の民宿は「古い民家の内装をリフォームしてホテル並みの設備を整えた宿泊施設」です。私の泊まった部屋はちょっと狭かったけれど、古い建物や窓からの景色の情緒、レトロな内装などが部屋の狭さを補ってあまりありました。
 窓から水の流れが見える水路沿いの部屋とそうでない部屋では料金が少し異なります。私は水路沿いの部屋を選びました。民宿は70棟くらいあって番号が振ってあり、西柵地区の入り口に近い方から順番に奥に行くに従って番号が大きくなります。番号が大きいと奥までかなり長い距離を歩かなければなりませんが、大きな荷物は別途船で运んでもらえるので、散策がてら歩けば苦にはなりません。
 房東(日本語に訳すと“大家さん”)と呼ばれる管理人が常駐していて、宿泊客の世話をします。西柵全体が地方政府の経営する会社の持ち物となっており、管理人は政府(の会社)に雇われています。宿泊費に含まれている朝食は、民宿の1階の小さな食堂でいただきました。大家さんが作ります。頼めば昼食も夕食も作ってもらえますが、値段設定はちょっと高めです。それと大家さんの料理の腕に当たり外れがあるかもしれません。


天井が木で組んであって、日本の古民家にも似て、懐かしい感じがしました。



部屋の窓からの眺めです。



 電話がただレトロなデザインってだけかと思っていたら、使ってみるとすごく使い心地がいいのでびっくり。受話器の持ちやすさ、耳に当てたときの心地良さ、フィット感、ほわっとした声の届き具合、最近の電話では味わったことのないすばらしい感触でした。欠点は受話器が重いこと。長電話ができないかも。



 バスタブは付いていません。シャワーのみです。フロントで、「温熱器が家庭用のもので容量が大きくないので、一度お湯をたっぷり使うと再度お湯が使えるようになるまで15分くらいかかるので気をつけてください。」と言われました。部屋のバスルームにもそのように注意書きがあります。

 宿泊料は一泊442元、日本円で6,200円くらいです。

 朝食のとき、大家さんに聞いてみました。
 「ここの地方政府はとても賢いですよね。静かで落ち着いていてとてもいいと思う。東柵よりこっちの西柵の方が私は好きだな。」
 「そうね、あっちは人が住んでるから。」
 「引っ越すとき、反対の人はいなかった?」
 「うーん、いるにはいたけど、最終的には皆納得したし。」
すると、隣のテーブルにいた40代前後の宿泊客(北京の女性)がこう口を挟みました。
 「反対するのも、結局はお金の問題でしょ。ごねればそれだけ多く貰えると思うから。」
大家さんも、まあね、と彼女の意見にうなづいていました。
 それが本当かどうかは、私にはわかりません。引っ越すのが造作ないひともいれば、お金のためにごねる人もいるでしょうし、心情的に離れたくないと思う人もいたかもしれません。
 北京オリンピックのとき、古い下町が壊されて住民が立ち退きを余儀なくされたと、日本でも話題になりました。日本の報道は、立ち退きを拒む住民に対して強権的に追い出すような中国政府のやり方を批判するニュアンスでしたが、私は必ずしもそういう面ばかりではないような気がしています。
 古くて不便な住宅よりも、設備の整った近代的なアパートの方が住みやすくていいと、そう思う人もたくさんいるんじゃないかと思うのです。
 今まだ北京にも胡同と呼ばれる下町の路地が一部に残っています。北京でその路地を歩いていたとき、一緒にいた人に
 「まだこういうところが結構残っているんだね。オリンピックのときに取り壊されたところも多かったみたいだけど。」
と言うと、彼女は
 「そうそう。今ここに残ってる人は、失敗した、って思ってる人が多いみたいよ。もう今となっては、市内のいい場所に安く引っ越すことができないから。結局あの時が最後のチャンスだったってこと。」
と、胡同の住民の気持ちを想像するにしても、残ってよかったというふうに想像することは全くないようでした。
 情緒や風情のある古いものと新しくて便利なものと、“生活”という観点から見ると、どちらがよいのかはなかなか一概には言えないのではないでしょうか。

 
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