夢の中に、詩人の萩原朔太郎が出てきた。萩原朔太郎の詩が特に好きというわけでもなく、詩集を読んだこともないのに、なぜだろう。
学校の広い校舎で大勢の学生が廊下や階段を行き交う中、私は萩原朔太郎の背中を追いかけて走る。人ごみを縫って彼の背中を追いかけるのだが、ちっとも追いつかない。始めは黙って追いかけるのだが、そのうちに声を上げる。
「はぎわらさ~ん、はぎわらさ~ん。」
と叫ぶが、彼は振り向かない。途中、階段を封鎖していた柵をようやく乘り越えたりしながら、校舎をひとまわりして、とうとう1階のホールで姿を見失った。私は周囲の学生たちに、今、ここに萩原さんがいなかったか、と聞くが、誰もが首を振るばかりだった。
私は突然眩暈がして倒れた。意識が徐々に失われていく。周りを学生たちが取り囲む。薄れていく意識の中で、誰かが助け起こしてくれるのを期待するが、皆ただ黙って私を見下ろしているだけである。突然わけのわからない怒りが込み上げてきて、私はすぐ近くにいた男の服の裾を掴み引きずり倒した。怒りは暴力となって、その男をむちゃくちゃに引きずりまわし、服を引き剥がす。
目が覚めたとき、まだ体内に怒りと暴力の感情のかけらが残っているような気がした。たまに夢の中で喧嘩をしたり大声で叫ぶことがあるけれど、それで、昼間は気付かない抑制された感情が発散されているのかもしれない。