赤い風船


 
うっかり手をはなして
空にとんでいってしまった
赤い風船を
取りもどしてよ、と
泣きじゃくる

しまった、と思ったときには
もう遅くて
背伸びして飛び上がっても
届かなかった

赤い風船は
どんどん どんどん 遠のいて
青い空に溶けていく

私の風船
飛んでいってしまった風船

さっきまで目に鮮やかに映りこんでいた
赤い大きなかたまり
この手でしっかりと握っていたはずなのに
ちょっとした油断ですり抜けて
たちまち小さくなった

口惜しくて 口惜しくて
声をあげる

私の風船 取り戻してよ!

泣き叫んで
じだんだ踏んで
駄々をこねて

なだめられて
なぐさめられて
しゃくりあげながら
とぼとぼと歩いた
遠い昔

大人になった今、私は
飛んでいった風船に
ただ諦観を以って
溜め息をつく


  

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