iPod touch 水没の顛末


 愛用のiPod touchを便器の中に落としてしまった。完全水没。
 水の中で金属の色がキラキラと輝き、リンゴのマークがユラユラと、あざ笑うかのように揺らいでいた。
 水没したiPodはホーム画面でフリーズしたまま動かなくなった。電源ボタンを長押ししても全く反応がない。電源が切れない。そのうちに画面がすうっと暗くなり、ぱたっと切れて、うんともすんとも言わなくなった。
ネットで調べてみると、2週間ほど放置しておくと自然乾燥して回復する可能性があるらしい。一縷の望みを抱いて、しばらく待ってみることにした。

 12日後、充電器につないでみる。10分ほどして、乾電池のマークが現れた。ホーム画面もちゃんと出た。やった!…しかし指で触っても反応がない。タッチパネルの調子が悪いみたいだ。もう一歩、きっとあと1,2日で復活するに違いない。いったん充電器をはずす。
 13日目、もう一度充電器につなぐ。昨日と同じくホーム画面が現れた。操作してみる。動く!ちゃんと動く。狂喜乱舞。
 いろんな操作を確かめてみたが、何の支障もない。元通りだ。

 ところが喜んだのも束の間。まる一日はよかった。その次の日の夜、“バッテリーが少なくなりました、あと10%です”、という表示が出たので、充電しなきゃ、と思った矢先、ぱたっと動かなくなった。そして画面が消えた。しばらく充電器につないでみても、明かりもつかない。沈黙のまま。なんとなく、あ、今度はもういくら待ってもだめだろうな、と思った。なにしろ2007年製、第一世代のiPod touchなのだ。バッテリー自体が老朽化しているはず。それに追い討ちをかけるかのような水没。一時的に復活したのは、最後のお別れだったのかもしれない。私もこれで、きっぱりとあきらめがついた。

 余談だが、iPodも、せめて自分で蓋を開けることができたらいいのにと思う。そうしたら、短時間に乾かすことができて助かったかもしれないのに。iPodはバッテリーも自分で交換できない。例え蓋を自分でこじ開けたとしても、バッテリーはハンダづけしてあるので、自分でハンダづけできる人じゃないと交換できない。そりゃ、売るほうにとってはその方が都合がいいんだろうけど。家電でもなんでも、自分で修理しながら長く使う、っていうことができなくなってるのは残念だ。経済的なことだけじゃなくて、精神的に、物を修理して使うことには道具を生み出し使う人類としての喜びと充実感がある。現代社会では、その喜びがいやおうなく奪われてしまう。

 それはさておき、だいぶん前から、私は夫からiPhoneを買え買えと勧られていた。しかし古いiPodに愛着があったし、きっとそんな高機能の新しいものは使いこなせないし必要もない、猫に小判、豚に真珠だと、言い続けてきた。
 その最中にこのiPod水没事件が起きたのは、もしかしたら神の思し召しだったかもしれない。

 そんなわけで、私は鉄の斧を落として、金の斧を手に入れた(自腹だけど)。
 次回は、iPhoneの話。


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