夢を見た。
キッチンのシンクが二つ並んでいる。水道の蛇口も二つ。それぞれのシンクの前に、女性が一人ずつ立ってそれぞれ洗い物をしている。女性の一人は妹、一人は友人。シンクに置かれた金盥の中には食器が積まれている。彼女たちは水をジャージャー流しながら、食器を洗っていく。私はダイニングの椅子に座って彼女たちの後姿を眺めている。
すると、突然シンクの下からじゃばじゃばと水が溢れ出す。シンクの下には扉がなく、洗い物をする女性たちの足の向こうにシンクの排水口から床まで縦に延びた排水パイプがむき出しになって見えている。そのパイプの継ぎ目から洗剤を洗い流したあとの排水がどんどん流れ出てくる。私はあわてて「早く、水を止めて」と叫ぶ。友人はすぐに気づき蛇口の栓を閉めるが、妹はまだのんきに水を出しっぱなしにしているので、私は駆け寄り、飛び付くようにして蛇口を閉めた。
さて、排水パイプを調べてみると、排水口から床までのパイプはつなぎ目のない一本のビニールパイプではなく上下のパーツに分かれていて、上のパイプと下のパイプの継ぎ目に巻かれていたビニールテープがはがれている。もともと上下のパイプは口径が合わず、きっちりと合わさらないパイプの間の隙間を埋めるように布切れが幾重にもぐるぐると巻きつけてあり、その上に更に修理用の黑いビニールテープが巻かれていた。そのビニールテープがはがれて、継ぎ目は十二単衣のように巻かれた布切れだけで繋がっている。
私は継ぎ目の部分だけを取り出して(そんなことは実際にはできないのだが、なにしろ夢の中のことだから)、テーブルの上に乘せ、修理を始めた。テープを巻きなおせばいい。ところがテーブルの上がごちゃごちゃに散らかっていて、さっき一度手にしたはずのビニールテープがなかなか見つからない。継ぎ目を片手で持ってもう片方の手で拾い上げるのは、テープではなく布を巻いたものだったり、リボンのようにひらひらしたものだったり、テープでも細すぎて使い物にならなかったり、どれもこれも役に立たないものばかり。ついさっきそこに置いたはずの粘着力が強く幅もある修理用の黑いテープがちっとも見当たらない。目につくのは、ことごとく似て非なるもの。