母と二人で、砂に半分埋もれ廃墟と化したビルを通り抜けようとしている。ビルの窓にガラスは1枚もなく、コンクリートの穴が黑く規則正しく口を開けている。母とともに砂山を登り窓のひとつから中へ入ると、大勢の人々が私たちと同じように向こう側に通り抜けようと通路を探している。砂や瓦礫でふさがれた通路や階段を行きつ戻りつしながら、私たちはようやく反対側の窓際にたどり着いた。
窓から外を眺めると、大勢の人々が避難民のように列を成して歩いている。その列の中に甥っ子の姿が見えたと思ったが、近づくとそれはよく似た子供で、私はがっかりした。
外壁に沿った石段を下りていくと、今度は女性の腕に抱かれた赤ん坊の姪の顔が見えた。(姪は実際は4歳なのだが。)そして私はまた、その赤ん坊を抱いた女性の斜め後ろに、中年の女性の姿をした姪の顔を見つけた。母はそれに気付かないようであった。
荒涼とした景色の中をどこへ行こうとしているのかもわからず、ただ歩くだけの寂しさなのに、なぜか重苦しさや辛さはなく、終始落ち着いて淡々と歩いていた。悪くない夢である。