まずは“風”の話。
僕の好きな女の子は “葉”と呼ばれてる。彼女は一本の木に恋してる。だから僕は風になろう。一陣の風となって彼女を守ろう。
初めて彼女に気づいたのは高二の秋だった。彼女は运動場の隅のベンチに座って一心に誰かを見つめていた。彼女の視線の先にはいつも同じ男。僕は風になって彼女の心を動かしたかった。しかし、彼女の心はかたくなで、何度アプローチしても拒まれるばかり。いや、彼女はかたくななのではない、彼女は単に木から離れたくないだけだ。それでも僕はあきらめなかった。4ヶ月の間に数十回、告白した。その度に彼女は僕の言葉をはぐらかす。それでも僕は決してあきらめなかった。必ず彼女を僕のものにするんだ。
ある日、僕はいつものように、電話で彼女に愛を告白した。一縷の望みを抱いて。彼女は黙ったまま何も答えない。「なんで黙ってるの?何か言ってよ。」「うなづいてるのよ。」「え?」「私はうなづいてるんだってば!」
僕はあわてて外に出て自転車に飛び乘り、彼女の元へと走った。
“葉”の話。
高校時代、葉っぱを集めるのが好きだった。どうしてだろう?それはおそらく、一枚の葉が、長い間頼りにしていた木から離れるその勇気に感嘆したからだと思う。
高校の三年間ずっと仲良しの男の子がいた。恋人同士ではない。親友のような関係。けれど、彼に初めて彼女ができたとき、胸が張り裂けそうになった。2ヶ月後、彼がその彼女と別れた時は、うれしくって飛びあがりたい気持ちだった。けれど、彼にはすぐにまた新しい彼女ができた。私たちはお互いに何もかもわかりあっていて、お互いに友だち以上の感情を持っているはず。なのに、なぜ彼は…?
それでも、私は彼が好きだったし、ずっと傍にいた。彼が戻るのを、三年間待ち続けた。胸の痛みに耐えながら。
三年の後期になって、後輩の男の子から交際を申し込まれた。断わっても断わっても熱心に誘う彼に、私の心は揺らいだ。彼はまるで、暖かくやさしくそして絶え間なく吹く風のように、ゆらゆらと今にも落ちそうな葉を誘惑した。私は気づいた。この風は傷ついて疲れきった葉に幸せを运んできてくれるに違いないと。
そして、私は木から離れた。木はただ黙って微笑むだけで、私を引き留めはしなかった。
最後に“木”の話。
僕が“木”と呼ばれるのは、水彩画が得意で、特に木の絵を描くのが好きだからだ。作品には、サインの代わりに右下に一本の木を書く。
高校の三年間、5人の女の子と付き合った。本当はある女の子のことをとても好きだったのだけど、なぜかその子には付き合おうと言わなかった。
告白しなかったのは、恋人同士になってしまったら、今までのいい関係が崩れてしまうんじゃないかと恐れたからかもしれない。それともどっちみち彼女は僕のものなのだから、急ぐ必要はないと思ったのか。
それで結局のところ、三年もの間、彼女は僕の傍にいて、僕と他の女の子が仲良くしているのを眺め続けることになった。
僕と二番目のガールフレンドがキスしてるところに、彼女が出くわしたこともある。「どうぞ、つづけて。」彼女はそう言って駆けていった。四番目のガールフレンドは彼女のことをひどく嫌っていた。ある時、僕のガールフレンドと彼女がケンカしたとき、僕はガールフレンドの方をかばって彼女を叱った。彼女はびっくりして大粒の涙をこぼした。
そして、五番目のガールフレンドと別れた僕が、彼女にそのことを伝えたとき、彼女はこう言った。「実は私、彼と付き合うことにしたの。」僕には“彼”が誰だかすぐにわかった。最近ずっと彼女を追いかけていた年下の男だ。胸の痛みを感じたが、僕はただ笑って祝福した。
家にたどりつくと、耐え切れないほどの痛みが襲った。胸が苦しくて息ができない。涙がこぼれ、僕は大泣きに泣いた。
卒業式の日、あの日以来ずっと切っていた携帯に一通のメールを見つけた。それは十日前、僕が泣いたあの日に送られてきたものだった。
“葉が離れるのは風のせい?それとも木が引き留めないからなの?”
(“葉子的離開、是風的追求、還是樹的不挽留”)
だいぶん意訳してあるし、だいぶんはしょってあります。
初出と思われる中国語の原文はこちら↓にありますが、ログインしないと最後まで読めません。
http://cibe.yourblog.org/logs/240455.html 数ヵ月後に別のブログに転載されたのが、こちら↓です。全文読めますが、風と木の話の順序が入れ替わってます。
http://xiaorui217.spaces.live.com/Blog/cns!C5E86589565304DC!460.entry風と葉と木の物語(3)へ